7人が本棚に入れています
本棚に追加
(綴る夢くらい、選べたやろ。)
蒲生より託された文。
それに倣い、手に入れたのはひとつの冊子。
(君なら……選び取れたはずや。)
黒に染められた日常。
内容はどれも、現実とは違う世界の出来事が記されていた。
陽動でもするかのように、躍動感たっぷりに。
それが理解出来るに至ってしまった己の不器用さを、芝山は正直に悔やむ。
(忠興くん、これ聞いたら怒るやろなあぁ…。)
「取り敢えず、も少し考えて」
「芝山さん。」
「 」
避けたい思いは皮肉にも裏切られた。
植え付けられた知識が意識を勝手に凌ぎ、自ずと道の【先】を示す。
「忠興くん。」
「そのまま聞いて下さい。」
背中で響く声は、以前より更に衰弱していた。
「氏郷さんのこと、自分で何とか出来ればとあちこち歩いてたんです。でも…。」
此方の応答を構わない様子の【もう一人の弟】。
彼もまたこの【不条理な因果】に巻き込まれ、闘い続けていたのだろう。
「駄目だったから、最後の手段。…夢を、見てみようと思います。」
「……。」
最初のコメントを投稿しよう!