【現邸の夢日記】

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  (綴る夢くらい、選べたやろ。) 蒲生より託された文。 それに倣い、手に入れたのはひとつの冊子。 (君なら……選び取れたはずや。) 黒に染められた日常。 内容はどれも、現実とは違う世界の出来事が記されていた。 陽動でもするかのように、躍動感たっぷりに。 それが理解出来るに至ってしまった己の不器用さを、芝山は正直に悔やむ。 (忠興くん、これ聞いたら怒るやろなあぁ…。) 「取り敢えず、も少し考えて」 「芝山さん。」 「  」 避けたい思いは皮肉にも裏切られた。 植え付けられた知識が意識を勝手に凌ぎ、自ずと道の【先】を示す。 「忠興くん。」 「そのまま聞いて下さい。」 背中で響く声は、以前より更に衰弱していた。 「氏郷さんのこと、自分で何とか出来ればとあちこち歩いてたんです。でも…。」 此方の応答を構わない様子の【もう一人の弟】。 彼もまたこの【不条理な因果】に巻き込まれ、闘い続けていたのだろう。 「駄目だったから、最後の手段。…夢を、見てみようと思います。」 「……。」  
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