【現邸の夢日記】

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  「わがままで、御免なさい。」 紡がれたこの言葉は、謝罪ではない。 「……あの、」 「…ほんまにもう。」 彼お決まりの 遠慮がちで不器用な【お願い】だった。 「俺もちょうど忠興くんに会いたい思うてたとこやったし、構へんよ。」 「……御免なさい。」 「良ぇから、ほれ。」 徐に屈み込む芝山。 (可愛ぇ弟やねん、どっちも。) そっとその背に身を預ける細川は、少しだけ笑う。 「みどり……あったかい。」 「芝山。」 「芝山さん。…ありがとう。」 「おう。」 幼いばかりだったあの日を、思い出して。  
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