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◇◇◇
これから通うことになる高校を後にし、オレと快里は花屋に寄ってからある場所へ向かった。
ーー墓地だ。
凛「ばあちゃん!オレも快里も合格!すげーよな、頑張ったよな、オレら!」
浮かれる気持ちを抑えられずに、真新しい墓石にぺらぺらと話し続けた。その間、快里は呆れたような笑みを浮かべて花を供える。そして慣れた手つきでマッチの火を線香に移した。
快里「フツー、話しかけるなら今でしょ」
凛「るせーな!」
言いながらつーんと口を尖らせる。お互い笑い合い、並んで手を合わせた。
(ばあちゃん、喜んでくれてるかな…?)
目を閉じた数秒間に、ばあちゃんの顔がはっきりと浮かぶ。優しくて、いつも笑ってるばあちゃん。一緒に暮らした思い出が、すでに枯れ果てたと思っていた涙をまた誘った。
凛「…なぁ母さんや。男が墓参りで泣くってだせーかな?」
前を向いたまま尋ねる。
少しの間を置いて返ってくる声。
快里「そんなことないよ、父さんや。他にもたくさんの男がここで泣いただろうよ」
いつもの夫婦ごっこだ。
一緒にいるうちにすっかり定着してしまった。このやりとりがオレの精神安定剤の役割を果たしてくれている。
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