18人が本棚に入れています
本棚に追加
真琴SIDE* * *
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「あれ、寒い…。」
玄関を開けた瞬間想像以上だった寒さに身を縮めた。
急いでカーディガンを取りに行って羽織る。
心に開いた穴がスースーして、何だか自分が自分じゃないような気がしていた。
何をしても身がはいらない。
気分転換に長くなった髪でも切ろうかな、と思っていた。
コンクリートの上をローファーで歩く音が小さくコツコツと響いていた。
「はよ、」
後ろから声がしておもむろに振り返る。
聞き覚えのある心地の良い声が聞こえたから。
「おは……よ?!!」
振り向いて目に入った光景にびっくりした。
「びっくりした??」
ニコニコ顔で聞いてくる綾瀬くんの片割れ。
そこには同じ顔が並んでいた。
「ハハ、連れて来ちゃった。」
「はじめまして!いつも朝希がお世話になってます~、双子の片割れ雅希です。」
「……。」
さすがに固まった。
この疎い私でさえ芸能活動中の綾瀬雅希くらい知ってる。
人生初めて芸能人とはなしちゃったよ…。
「どうやら思った以上に驚いたかな。」
2人でハハハとばかりワラッテイテついていけない私。
「井上が元気出してほしくて連れてきたんだ、元気でた?」
朝希くんのほうであろう人物にそう聞かれてコクリと頷く。
「やあ、他の人には真似できない元気づけ方じゃない?」
終始ニコニコしてる綾瀬くんは絶対私にかなり気を使っている。
「最高のサプライズだった。ありがとう。」
綾瀬兄弟はえくぼをつくって一緒に笑った。
わッ…
今周りの空気変わった。
「俺…学校逆だからここで引き返さないと間に合わない。」
腕時計を見つめて雅希くんが言った。
「はは、そりゃそうだよな。わりーな雅希」
「こういうことなら全然大歓迎。真琴ちゃん、また会おうね。」
片手を上げて口角をグッとあげた雅希くんの笑顔を目の当たりにしてもの凄い破壊力だな、と思い知らされた。
最初のコメントを投稿しよう!