未来

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私も自分なりの一番の笑顔をつくってペコっとお辞儀をした。 Uターンして走って帰ってる雅希くんをみて、こんなに有名で仕事大変なのにちゃんと学校に通ってるんだとおもうと関心させられた。 「井上、一緒に行こうぜ。」 「うん。」 電車に揺られながら、見慣れた街並みを見て何かをぼーっと考えていた。 通り過ぎた遊園地。 一緒に通ったファミレス。嫌になるほど勉強会を開いて一緒に進級しようって頑張ったんだよね。 ゲームセンターの駐車場でボロボロになってまで助けてくれたんだっけ…。 窓に手をついて、遠ざかっていく思い出の場所を必死に目にやきつけようとした。 ほんとに、無駄なんかじゃなかった。 何でこういうときって楽しかった思い出ばかり頭をかすめるんだろう。 本当に神様って意地悪だ。 私が一般人じゃなかったら別れなくてすんだ…? 龍之介が伊藤グループの後継者なんかじゃなかったら…こんなに悩まずにすんだ? 考えると止まらなくなって自暴自棄になってしまう。 他の周りのカップルは家柄とかそういうのを気にせずに何にも関係なく付き合っているのに私達はあそこまで家柄という言葉にひっかきまわされたのだろう。 電車から降りて、綾瀬くんの斜め後ろをついていく。 綾瀬くんは私にあまり言葉をかけずに目があうとえくぼをつくってニコっと微笑むだけだった。 駅から学校までの道にある公園。 ここで初めて会ったんだっけ…。 付き合う前に発覚した私の慶帝大の推薦の件…。 それが原因で一時期避けられたけど、夜遅く熱出して襲われそうになった私を助けてくれたのはまぎれもなく龍之介だった。 …ーあぁー… いつになったら忘れられるのかな。 視界が涙で歪み始めると私の頭の上に暖かい手がのった。 「我慢しないで泣けよ?」 まるで心の中を全部見透かすように綾瀬くんは言った。 「泣いた分だけすっきりするから、だから我慢することなんてない。」 頼ってしまうような その言葉の暖かさに いつもつまづいたとき手を差し伸べて助けてくれる優しさに 私は何度救われただろうか。
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