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「あんな馬鹿女と結婚するくらいなら逃亡してやる。」
そういうと糞親父は少しだけ笑みを見せた。薄く儚い味気ない微笑みだった。
今まで生きてきたなかで糞親父が笑った顔を見たことがない。
小さいときからいつも厳しくて、冷酷で、ロボットみたいな人間だった。
「さあ、着いたぞ。行ってこい。こっちの仕事は私一人で片付ける。」
「.......サンキュ。」
聞こえてるか聞こえてないか分からないような小さい声で糞親父にそう告げた。
車から降り、フロントに問い合わせて3060号室に向かう。
久しぶりに会う母さんにも少し緊張しながら部屋の前までたどり着いた。
「........母さん、開けて。」
間もなく扉はゆっくりと開き、自分と似た顔をした女性が顔を覗かせる。
「.......久し振り、大きくなったわね。」
昔とまったく変わらない母さんがニコッと笑って俺にそう言った
。
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