20人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
てきぱきと家事を済ませると、もう睦月君は玄関から私に手を降っていた。
「じゃあな。」
急いで玄関までいって彼を送る。
「うん。また明日ね。」
笑顔を作りながらそういって片手をあげるとその手を掴まれたぐり寄せられた。
軽く唇同士があたる。
「.......?..?..?????」
固まってなんにも喋れなくなった私に対してケラケラ笑いながらでこピンをした睦月君。
「なーに固まってんの?じゃ。」
彼が玄関から出て行き、嵐が過ぎ去った後のような部屋に私は一人取り残された。
何度も自分の唇を手で触る。
1日に何度も、ただ理由なく触ってしまう。
そして無駄にどきどきしながら、何故か睦月君を思い出してた。
こんなにも、落ち着かなくてそわそわする理由はちゃんと分かってる。
ため息を吐きながら、窓の外を何度もみた。
てもきっと私は、この先誰かと真剣に向き合ってつきあうことはないかもしれない。
心の奥に..................アイツがまだいることくらい自分が一番分かってる。
次に進んでいない自分に腹が立つ。
今でも思い出すだけで心が温かくなって涙がでるんだから仕方がない。
ソファーにもたれ掛かって瞳を閉じるとすぐに意識はとんで眠りについた。
それは、突然のことだった。
数日後、大学の食堂でアカリちゃんが信じられないことを言い出した。
「この間、たまたま入ったイタリアンのお店に伊藤龍之介がいた。」
たまたま、大学の近くのコンビニで偶然、結乃くんと会ったアカリちゃんはその日が結乃くんのバイトの給料日だと知り急遽、少し高めのイタリアンでごはんをおごらせたらしい。
そこでたまたま女の人と向かい合わせに座る龍之介をみたって話。
別れて半年以上、いや......1年近く経とうとしているんだから彼女がいることなんて全く不思議じゃないけど
やっぱり、切ないものはある。
今になってたまに思い出しているのはやっぱり私だけか。
少し自嘲気味になりながらそんなことを思ってた。
「はは、そっか。」
それしか答えようがない。
今更、だってしょうがないじゃん。
龍之介には、龍之介の人生があるんだから。
最初のコメントを投稿しよう!