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奇跡
時間が止まったようなそんな感覚に陥った。
「‥‥‥嘘でしょ‥‥。」
もう学ランじゃなくてスーツを着こなし、少しだけ雰囲気の変わった龍之介が目の前にいる。
まだ、夢の続きでも見てるのかな。きっとそうだ‥‥だっていきなり龍之介がいるわけなんてない。
ほっぺたをつねろうと手を頬へ持って行く。
「夢なんかじゃねーよ。」
龍之介は私が何をしようかわかったらしくすぐに止められた。
「‥‥‥龍之介?」
「おう。」
「本当に龍之介‥‥なの?」
「だからそうだって、伊藤龍之介。」
ベッドに腰掛けて私の頭をくしゃくしゃと乱した。
嬉しくて、嬉しくて‥‥‥‥‥嬉しくて涙が頬を伝う。
「何泣いてんだ‥‥。」
彼は優しく指で涙を拭き取り、耳元で囁いた。
「見ないうちに‥‥綺麗になった。」
龍之介はニコッと笑うと私を抱きしめる。
「龍之介、ずっと‥‥‥会いたかった。」
この世に神様って本当にいるのかもしれない、本気でそう思った。
愛おしくてたまらない、龍之介の顔に手を伸ばす。
二重で綺麗な目に、形のいい唇。そうそう、確かにこんな顔してたんだ。
思い出してクスリと笑ってしまった。それを見た龍之介は眉を少し上げる。
「人の顔見て笑うなんて失礼な奴だな。」
「ごめん、つい懐かしくて。見ないうちにはっきりした龍之介の顔の記憶が曖昧になってた。」
「俺の顔忘れるなんて本当にバカな奴。こんなイケメンめったにお目にかかれねーのに。」
そう言って龍之介は口角をグッと上げた。
「自分で言っちゃったよ。」
そうそう、これ。
この表情が凄く見たかった。
自信満々のこのしたり顔、本当に‥龍之介なんだな。
「龍之介、おかえり。」
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