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少しマシになった体を起こして龍之介の隣に腰掛けた。
熱はあるし、寝てろとさんざん怒られたけど興奮でそれどころじゃない。
ちょっとだけだからな、すぐ寝ろよと忠告されオデコに軽いでこピンをくらった。
「龍之介は今、何してるの?」
「社会人。」
まあ、そのスーツ姿からその答えは安易に想像は出来ていたけど‥。
「やっぱ、会社継ぐんだね。」
「まぁな。本当は大学を卒業してから会社で働かせる予定だったらしいけど、俺があまりも言うこと聞かないから大学より会社に親父が入社させた。」
顔をしきりに歪ませながら話す彼を見てそんな所ばっかは変わってないなと思った。
「もう、糞親父って言わないんだね。」
龍之介は、少し黙って口を開く。
「何で呼ばなくなったんだろうな、でもようやく知れたんだ。親父が本当の親父じゃないこと、血がつながってないって。」
目を見開く、そうだ‥龍之介と伊藤社長は血がつながってなかったんだ。
黙っててって滝波先生に、言われてから誰にも言わなかったけど龍之介はようやく本当のことを知れたんだ。
「ごめん、知ってた。伊藤社長が龍之介の本当のお父さんじゃないこと、滝浪先生が本当のお父さんだって。」
私はどんな顔してこの話をすればいいのだろうか。
「そうか。」
龍之介はそれしか言わなかった。
「知ってたのにだまっててごめん。」
「滝浪から聞いてたのか?」
「龍之介と付き合う前滝浪先生から聞いた。口止めされてたし誰にも言わない約束だったから。」
「正直、本当のことを聞いたときはびっくりしたけどなんとなく言われてみればそんな気がしてたし親は誰であろうと俺は俺だから。気にしないようにしてる。」
少しずつ、少しずつ時計はカチカチと音を鳴らしてときの流れを知らせる。
沈黙になると時計の針の音はとても大きく聞こえた。
「ねえ、龍之介。」
拳を握って、意を決する。ダメもとで言ってみようと思う。自分の気持ちを‥‥。
別れたのは、私の判断にかかっていたのも事実だしあの頃の私の選択で別れを選んでいなければ、今とは違う未来が私たちを待っていて今でも一緒にいたって思うしそう信じてる。
「ん?」
龍之介は私の顔を覗き込んだ。その迫ってくる整った顔にドキンと心臓が跳ねた。
免疫はやっぱり落ちていたか‥‥。
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