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閑静な図書館の中。ペラリペラリと本をめくる音だけが聞こえる。マリアンはまた本を広げ、文字を追いはじめた。
図書館の中にはマリアンの他に4,5人生徒がいるだけ。放課後、ほとんどの生徒が家路につく時間帯に図書館に残っている生徒は珍しい。
「ふう」
小さいため息をついて、マリアンは本を閉じた。今ようやく読み終えた本を眺め、表紙をそっと撫でる。
この本は、魔女の歴史を物語調で描いた「魔女の真実 10000年の歴史を語る」という本だった。この世界には魔法を使えない人間という生物がいて、魔女はその人間達に迫害されていた。なんてことがつらつらと書き連ねてあったが、そんなこと、ありえるだろうか。
「この本が本当に史実を描いた本なのかただの作り話なのか長い間議論されてるのもわかるわ」
マリアンはそう呟いて席を立つ。
一冊で2キロほどの重さをほこるこの本を抱え、えっちらおっちら運ぶ姿は周りから見たら相当おかしいものだろう。しかし、使い魔を出して運ばせるわけにもいかない。
図書館外に持ち出せないいわゆる「禁退出」のこの本は厳重に管理されている。読みたいと申請して許可された魔女だけがこの本に触ることができるのだ。
「よし、これでオッケー。厳しいアカスジェル司書も文句は言わないでしょ」
陳列の出来に満足したマリアンは足取りも軽く図書館の奥にある禁退出コーナーから出た。
その時。スッと黒い影がマリアンの後ろを通った。
「?……まあいいか」
マリアンは深く考えずに図書館の出口へと急いだ。
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