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テーブル席に戻ると、先ほどまではいなかった生徒が1人、本を読んでいるのが目に入った。図書館では見かけたことがない生徒だ。
マリアンは興味をそそられ、その生徒の後ろにそろりと回り込んだ。
銀色の短い髪、シャツからのぞく綺麗な腕の筋肉。スカートの制服さえ着ていなければスポーツマンの男子と見間違えそうだ。
そんなアクティブ女子がどんな本を読むのか気になったマリアンは、後ろから本を覗き込んだ。
「こ、この本は……!」
マリアンの呟きにアクティブ女子がピクリと肩を震わせて振り返る。目つきはかなり悪く「何見てんだてめえ」状態だったが、マリアンは気にせず手をとって彼女に詰め寄った。
「それ、「失われた街に霧は降りるか」だよね!好きなの?ねえ、好きなの?好きなんだよね!」
「あ、ああ、まあ」
女生徒はマリアンの勢いに押されるように答える。
「面白いよねええ!やったあ!始めての仲間だ!」
はしゃいで飛び回るマリアンの頭に、バインダーがバコンと振り下ろされた。厳しくて有名な司書のアカスジェルさんだ。
「またあなたなのマリアン。いいかげん本の話となると周りが見えなくなる癖、治しなさい」
「はーい」
マリアンは口を尖らせ、アカスジェルさんの後ろ姿にあっかんべーをする。
「あんた、すごいな。あのアカスジェルさんに怒られてもけろっとしてるなんて」
女生徒が苦笑しながら言った。マリアンも笑顔で返す。
「私は常連だからね。あなたは見かけない顔だけど」
マリアンがそう言うと、女生徒は名札を指差しながら自己紹介した。
「私の名はノイ・ドレッター。Eクラスだ。あんたは?」
「私はマリアン・ホミー。Aクラス」
マリアンも自己紹介をすると、ノイは驚いた顔をした。
「Aクラスか。優等生だな」
「そんなことない」
ここ、キャスリート高校では、能力の順にAクラスからEクラスにクラスわけされている。
「たぶんもう分かってると思うけど私はAクラスのなかでは最低のレベル」
「ああ、確かに頭はいいけどバカな感じがするな」
ノイはハハッと快活に笑う。
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