第10話

10/27
前へ
/27ページ
次へ
「こっち来て。 こっちのソファの方がゆったり座れるから」 最初は座る気などなかったあたしだけど、 すごく申し訳ない気持ちになった。 「…」 せっかくの誕生日なのにあたしときたら無愛想で、 無駄な事は一切何もしゃべらないようにと 頑な態度だし、その上プレゼントもないし。 「俺がそこに座る」 戸惑っているうちに先に下座に座られてしまった。 迷ったけど、 お弁当の入った紙袋をテーブルの端へ置き、 長いソファに肩身狭げに座った。 常務はあたしの複雑な心中など、知る由もないだろう。 冷たく当たり続けているあたしの心は、 実は―――… 大きく揺れていることを。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1516人が本棚に入れています
本棚に追加