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「そういえば、ろうそくはないんですか? 火をつけましょう」
「別に、いい」
「でも、せっかくですから」
「これ、おまえにやるために買っただけだから」
「え…?」
あたしはきょとんとする。
「俺が食いたくて買ったわけじゃない。
おまえが喜ぶかな、と思って…さ」
自分の誕生日に人の好きなものを買ってきて。
本当、何してんの、この人は。
「前もって言ってくだされば、
軽いお祝いのプレゼントとか、用意しましたのに」
常務はグラスワインをテーブルの上へそっと置いた。
「もらったよ、最高のプレゼント」
彼はあたしに温かい目をむけていて、
「ここに来て、祝ってくれただろ、俺の誕生日」
微笑んでいる。
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