第10話

13/27
前へ
/27ページ
次へ
「そういえば、ろうそくはないんですか? 火をつけましょう」 「別に、いい」 「でも、せっかくですから」 「これ、おまえにやるために買っただけだから」 「え…?」 あたしはきょとんとする。 「俺が食いたくて買ったわけじゃない。 おまえが喜ぶかな、と思って…さ」 自分の誕生日に人の好きなものを買ってきて。 本当、何してんの、この人は。 「前もって言ってくだされば、 軽いお祝いのプレゼントとか、用意しましたのに」 常務はグラスワインをテーブルの上へそっと置いた。 「もらったよ、最高のプレゼント」 彼はあたしに温かい目をむけていて、 「ここに来て、祝ってくれただろ、俺の誕生日」 微笑んでいる。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1515人が本棚に入れています
本棚に追加