第10話

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「…っ」 いつの間にか常務はあたしの隣に来ていて、 あたしの体をやさしく包み込んだ。 背中をさすって、あたしが落ち着くのを黙って待っている。 あたしは、そんなことされる資格のない女なのに。 ―――ああ、どうしよう。 今、はっきりとわかった。 あたしは、 常務が好きなんだ。 「おまえ俺のせいで苦しんでるよな」 違うよ、と言いたいけど、声がだせなくて。 あたしは虚ろになりながらもゆっくりと首を横に振った。 涙がとめどなく、流れる。 押えても、ねじ伏せようとても。 あたしは、彼の事が、好きなんだ。 好きが溢れてとまらない。
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