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常務は、あたしの上腕部を掴んでゆっくりと引き離した。
「苦しんでいるってわかっているのに、
おまえが俺のすぐ手の届くところにいるから―――…離せない。
離したくない」
微かに、ブラウンの瞳の真ん中が左右にぶれてる。
「自分の気持ちを、抑えきれない」
あたしの涙を親指の腹で拭い、
唇に触れた。
「おまえが嫌だというなら、キスしない」
あたし、おかしい。
頭では、いけないとはわかっているんだ。
でも、否定の言葉が出てこない。
それどころか、
“この人に触れてみたい”
なんて気持ちがわいている。
何も言わないあたしの反応を見るように、
あるいは、試すように。
常務はあたしの唇に触れるだけのキスをして。
数秒後、お互いの顔が拳一つ分くらい離れた。
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