第10話

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先週と同じように屋上でお弁当を広げた。 「どうぞ召し上がって下さい。 私は、いりませんから」 「七海?」 「恐れ入りますが、 私のことを下の名前で呼ぶのはもう やめていただけませんか」 あたしのきつい言い方に、 常務の瞳は戸惑いを隠せないでいる。 「ここは会社ですし、」 あたしは、彼から目線を外して続けた。 「個人的にも、迷惑、なんです」 疑問を投げかけられる前に、立ちあがる。 「すみません、仕事の打合せがあるので席を外します。 30分後に容器をとりに来ますから」 「…」 常務の視線があたしの背中に集中している。 その威力ははかりしれない。 衣服を突き破って 心臓のど真ん中まで到達したみたいに胸が痛み、苦しい。
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