序章─証明─

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1時間にも満たない移動の末、敵の姿は補足できた。 情報通り敵は一体。相手もこちらの姿を認めたのか砲撃を開始する。 しかし、移動する標的相手にそう簡単に当たるものではない。 「そのくらい!!」 一喝すると同時に機関の出力を上げ、増速を開始する。 之字運動を行いながら接近。敵の砲撃によって周辺に水柱が起こるがどれも至近弾とはなり得ない。 敵は一向に動こうとはしない。そのことに違和感を感じつつも接近を続ける。何かをたくらんでいるのかも知れないが、相手が動かないならこのまま接近して魚雷を叩き込むだけだ。 その時、ようやく敵が移動を開始した。しかし、既に十分に距離は詰まっている。今から全力発揮をしたところで魚雷が作り出す網の目から完全に逃げ出すことは不可能だ。 「いっけぇ!」 掛け声と同時に大腿部に固定された魚雷発射管を発射体制に移行させ、扇状に魚雷を放つと同時に反転する。6射線の魚雷は敵を捕らえる網のように広がりながら接近し… 轟音─── 放ったうちの1本が敵を捉え、水柱が相手の姿を掻き消した。 「やった!」 思わず歓声を上げるが、まだ撃破を確認したわけではない。 しばらくして再び視界が晴れたとき、吹雪の目に入ったのは逃走に移った敵の姿だった。 その一部は大きく抉られ、損傷個所から漏れ出る黒い物質が霧散していく様は黒煙を吹きあげているように見えなくもないが、航行不能に至るまでのダメージではなかったらしい。
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