序章─証明─

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吹雪は指示を仰ぐべく回線を開く。 「報告します。敵駆逐艦に魚雷一命中。敵は中破、撤退を始めました。追撃の許可をお願いします。」 その声は戦果への喜びを隠しきれていない。 「追撃を許可する。しかし油断はするな。」 一方の男の声は先ほどよりも一段低い、この状況が出来すぎだと感じているのだろう。しかし既に趨勢は決している、ここから逆転があるとは考えにくい。 「了解しました。これより追撃戦を開始します。」 通信を終えると早速追撃を開始する。 念のため之字運動は継続しているが敵は反撃をしてくる様子はない。機関にも損傷を受けているのか、速力も明らかに低下している。これなら砲撃で容易に止めを刺せるだろう。 接近しては一旦停止をして砲撃する作業を繰り返す。動きながら砲撃を行うより停止したほうが命中率は高いからだ。 手に持った連装砲から放たれた砲弾は次々と着弾、敵の動きは鈍っていく。 (これで最後…) 幾たびかの砲撃の後に再び停止すると、既に殆ど停止している敵に対して止めを刺すべく慎重に狙いを定める。 敵は未だ逃走を続けようと足掻いているが、この攻撃が決まれば力尽きるだろう。 照準を終え、ゆっくりと引き金を絞っていき…海原に砲声が響き渡った。
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