序章─証明─

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「きゃあっ!」 爆発とともに響いたのは敵の断末魔ではなく吹雪の悲鳴だった。 直撃弾により背中の艤装にわずかだが亀裂が入る。 しかし、今まさに止めを刺そうとした相手はとても反撃するほどの余力などないはずだ。事実今も残されたわずかな余力を振り絞り、少しでも遠くへ逃げるためにのろのろと移動しているのが確認できる。 慌てて移動を開始し、続く砲撃を回避する。 攻撃は追跡していた敵とは反対側に現れたもう一隻の駆逐艦級からだった。 艦娘は深海棲艦の存在を感じ取ることはできるが、正確な距離や方角、数はわからない。どうやら最初の敵が動こうとしなかったのは、隠れていた敵の存在を隠すためだったらしい。 「新手の対処を優先しろ。」 通信機の向こうの男は音声だけで状況を理解したのかすぐに指示が送ってくる。 いつでも止めが刺せる虫の息の相手よりも、健在な相手への対処を優先するのは言われるまでもなく理に適った判断だ。 その間にも新手は砲撃を続けている。 こちらも応戦を開始するが、互いに高速で移動しながらの砲撃はなかなか決定打を生み出せない。至近弾により互いに少しずつダメージが蓄積していく。
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