一週目『暗がりのキス』

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◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 海に面するしがない田舎町に引っ越してきたのは昨日のこと。 工場の営業という事で、まだ3ヶ月も勤めていない本社から、転勤指令を受けてやってきた。 田舎への転勤なんて『現代の口減らし』と変わらない。高給取りの人間を一人でも減らそうと、コストカットの意味も込めてここに飛ばされた。 「しょうもないものしかないな……」 7月の朝7時。出勤するサラリーマンにすれ違ったのは、たった7人。 7が三つで縁起がいいな。 駅前は開発されてなく、シャッター街ですらない。 無人駅に等しい、過疎駅。 右を見ても左を見ても、コンビニ一つも無いこの駅前がとても憎らしく思う。 注目すべきは『ロータリー』もどきの、この湾曲した道路だ。タクシー一台止まっていない、この無駄なスペース。
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