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「誰が見てるのか知らないが、相手が精霊を使っていたら、どっちにしたって話は丸聞こえかもわからないぜ。楽しく行くに越したことないさ」
何度も頭をバリバリとかく仕草に、少女はげんなりと肩を落として嘆く。
「あなたって、本当に品がないのね」
「嫌なら、品ってやつを教えてくれたらいい。おまえには腐るほどあるんだろう。その綺麗なお洋服の中やら、可愛く結った髪やら、そういうところにさ」
言われた少女があらためて自分を見てみれば、
着ているものは所々が破け、薄汚れてよれよれのワンピースである。
せめて、ベタベタして気持ちが悪いので無造作に結っていただけの銀髪をほどき、手櫛で梳いて撫でつけてみたものの、
自分のみすぼらしさにがっかりして、少女は何も言えずに黙り込んでしまった。
(私も品がなく見えるのかしら)
肩に羽織っているケープはワンピースと同じ生地で作ってもらったお気に入りだったのに、
旅に出て、外で腰掛けるときに敷物代わりに座るようになってからは、草の汁がところどころ染みになり、
なんだか青臭いような気もする。
しかし少女は口をつぐんだまま、
身なりが良くなくても、品性を失ってはいない、と、
胸を張って歩きだした。
「おいレイラ、怒るなよ」
「怒ってなんかいません」
「じゃあ笑えよ」
バーミーが顔を覗き込むと、彼女の口もとは震えているのがわかった。
目の中には涙の膜が分厚く張っていて、今にもこぼれ落ちてしまいそうだ。
顎をつんとあげて歩いていたのは、
怒っているのではなくて、俯くと泣いてしまいそうだったのかもしれない。
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