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「なあ、どうしたら笑ってくれるんだよ」
機嫌を損ねないように尋ねたつもりだったのに、
答えないどころか、こちらを見ようともしない少女。
その顔を覗き込むのをやめて、
バーミーはそっぽを向き、突き離すようにつぶやいた。
「いいさ。あとでベッドに忍び込んでくすぐるから」
「まあ!」
なんていやらしい、と蔑むような目で、レイラは彼との距離を一気に広げた。
「今後、私の五歩以内には近寄らないでね。あの時は助けてくれたと思っていたのに、なんて人かしら、全然、良い人なんかじゃなかったわ」
自分の領地の敷地内からほとんど出たことの無かったレイラは、
バーミーを探している途中、別の人を彼と間違えて声をかけてしまい、
危うく変な店に連れ込まれそうになったのだ。
助けてくれたのはバーミーだったが、
彼女は、淡い青の髪を上品に結んで垂らしていたあの男のほうが相棒だったらどんなに良かっただろうと、
この短い期間にすら、何度も思い返さずにはいられなかった。
「導師さまはもしかしたら、水晶玉に映ったものを読み間違えたんじゃないかしら。こんな人と一緒に行くようにおっしゃるなんて」
きっと何かの間違いよ、とレイラが言い放つと、
バーミーはつり上がった形のよい眉の間にシワを寄せて、真剣な顔に戻り、黒い目を光らせた。
「けどさ、あの男はただのいかがわしい店の客寄せで、その『導師さま』が言ってた『仲間』の条件には当てはまらなかったんだろ。そして俺には、ちゃんとカンテラの声が聞こえるんだぜ。旅の連れがこんなに顔も良くて腕の立つ騎士(ナイト)だったっていうのに、一体何が不満なんだよ」
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