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あの日、僕がそれを姫に告げたあの日。
「それなら妾はそちに付いて行く」
そう言って僕に着いて来てしまった。
姫の居なくなったあの木は、あの樹齢300年の桜の木は、移植を待たずに朽ち果てた。
そして、土地神を失ったあの地も無事で済むはずはなく……。
「本当に酷い有様だった」
と溜め息を吐く僕に、
「もうその話はよい。妾は今此処が気に入っておるのじゃ。それで良かろう」
と可愛らしい笑顔を見せる。
「本当に?」
「本当じゃ。駿介が此処に居る限り、妾が此処と駿介を守るのじゃ」
姫はそう言うと、僕の作った小さな箱庭の桜の天辺から、小さなその手をゆっくりと僕に差し出した。
H26.3.13 by KAORI
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