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 雪村が立花に勉強を教え始めること二時間。 「頑張ったね、立花。少し休憩を入れよう。下のカフェスペースに行こうか」 「……ハイ」  立花はできるだけ真摯に取り組んだ。が、普段使わない頭と筋肉を使ったため疲労困憊、よろよろと雪村についていく。 「ほら、立花。君の好きな綾鷹だよ。勉強頑張ったから、僕の奢りだ」 「ありがとうございます!」  元気を取り戻し拝む立花の頭を雪村が淡く笑んで優しく撫でる。  カフェスペースのテレビは、六時台のニュースを放映していた。最近東地域のあちこちで人が失神したまま目を覚まさないという。 「ねぇ、立花。この事件、どう思う?」  午後の紅茶無糖を手に、雪村は微かに表情を厳しくした。  立花もまた報道されている件を見聞きするとわずかに眉間を険しくする。 「……なんか、嫌な感じがしますね……はっきりとは言えないですけど、なんか引っ掛かります」 「そうだよね……ちょっと調べてみようか。まずは、失神したままの人々をリストアップするよ。あ、立花は勉強していてね? 僕、立花に宿題出すから」  にっこり笑む雪村に愕然とする立花。  ――立花雪村組、始動。
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