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病院で再び意識を取り戻したわたしは、父からつらい報告を聞くことになる。
車にはねられたわたしの身体は脊髄不完全損傷で、下半身がマヒした状態だということだった。
文字通り、わたしの人生は暗転した。
歩けるようになる確率は低く、残りの人生は車椅子で生活するようになる。
父はわたしに、ぽつりと告げた。
こんな時でも父は無口だな、とこれからの人生と別のことにわたしは哀しんでいた。
「マミには辛いけど大丈夫か?」
父が言葉足らずにいうので、「大丈夫じゃないかも」と可愛くない答えを返した。
また無神経な言葉をいってしまったと後悔した。
そのくちびるを突き出したいい方が、わたしが嫌いな父の癖だったのに気が付いたのは、父が哀しい顔をした時だった。
その癖は、父が何かいいたい時にするものだ。
大丈夫じゃないとわかったのは、わたしが家に戻ってからだった。
きのうまで考えていなかった車椅子の生活。
はじめて自分の車椅子を見た時は、銀のフレームと車輪が機械みたいで、自分が無機質な歯車の一部になったように感じて悲しくなった。
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