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平屋の家は車椅子で生活するのに困らないが、こういう時は正直めんどくさい。
小学校の時は二階建ての家にあこがれて父を責めて困らせたのに、まことに自分勝手なことだと思う。
車椅子という生活に何も感じなくなった頃。
季節は秋から冬に変わり、たそがれる街をわたしは窓から眺めていた。
家に引きこもるわたしは、一日中外の景色を眺めてすごしているかもしれない。
早冬の外の景色は、たれこめる灰色の雲が冷たく、街を冬色にしている。
窓を開けると容赦なく冷たい風が、孤独なわたしの部屋に侵入する。
まるで部屋の温度に染まったわたしを、冷たく暗い外界に誘うように。
メス猫のココアが寒いよという風に「にゃん」と鳴いた。
父のいない家の中で車椅子のわたしと一緒にいるのは、メス猫のココアだけだ。
母を亡くした慰めにと、父が知り合いからもらってきてくれたのだ。
ココアはジャパニーズボブテイルのシナモンで雑種だ。毛色がシナモンというよりココア色なのでココアと名付けた。
だけどほとんど寝ていて、呼びかけても「にゃん」とひと声鳴くだけ。
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