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でも車椅子生活になってから、家に引きこもるわたしの側を離れない。
ネコは寂しがり屋の匂いを嗅ぎ分けるのか。
窓から外を眺めるわたしの横で〈ぐるぐる〉と喉を鳴らしながら寝ているが常だった。
そのココアがまた鳴いた。おとなしく寝ているだけのココアにしては珍しい。
どうやら窓の外にココアが気になるものがあるようだ。
車椅子から身を乗り出し、窓の外を見てまわる。何もない。
いや、ココアとちがう鳴き声が聴こえた。
「にゃおん」
その鳴き声のする方を見ると、庭の梅の樹からだとわかった。
車椅子を操り、わたしは庭に出た。梅の樹の下であたりを探すが何もない。気のせいか?
すると頭上の樹の枝から何かが落ちてきた。
〈すとんっ〉と軽やかな音をたてて、わたしの膝の上に黒猫が降ってきたのだ。
その黒猫が〈ぐるぐる〉と喉を鳴らしながら、驚いているわたしを何かいいたげな金色の目で見る。
降ってきた黒猫は、あの事故の時見た黒猫だと思った。
黒いツヤツヤした毛並みを撫でさせてくれる黒猫をよく見ると、首に赤い首輪が付いているのを発見した。
その首輪には小さなBOXが付いていて、なかに何か書かれた紙が入っていた。
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