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第1話「切ない猫の交換日記」-1
わたしを殺したきみへ。
交換日記を届けられなかったことを、きみに謝りたい。
そして哀しい死に心を痛めて、わたしは涙が枯れるまで泣いたんだ。
それでも、もう一度奇跡が起こると信じている。
ここは奇跡の降る街『星降町(ほしふりまち)』だから。
わたしの青春は17歳で交通事故に奪われた。
女子校の帰り道。森に隠れた神社の前の、トラックの多い幹線道路。
赤信号で待つ人の群れから道路に飛びだしたわたしは、神社の前を小さな黒猫が歩いているのを見た。
「にや~」と聞こえそうな小さなピンクの口を開け、わたしに向かって黒猫が鳴いたように見えた。
黒い猫が通ると不吉だというのは、どうやら本当らしい。
なぜなら黒猫を見た一瞬のあと、わたしに向かってくる小型トラックが視界に入ったからだ。
ジャンプすれば、よけられる!
そんな浅はかな試みは、わたしが運動オンチだという事実に打ち消された。
〈どんっ!〉という衝撃と共に、わたしの視界は暗転した。
暗転といっても夜になったわけでなく、そのあと意識が飛んだのだ。
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