39人が本棚に入れています
本棚に追加
第2話「恋しさは腕に残る」―1
猫が鳴いた。
また今夜もアレがやってくる。
わたしは深呼吸をして、左腕に意識を集中した。
カチコチと鳴る時計の音だけが、部屋の呼吸音のようにわたしの耳に届く。
やがてソレはやってきた。
左腕の皮膚にかんじる、わたしとちがう温もりの感触。
それはいつからだろうか。
猫の鳴き声とともに、わたしの左腕に誰かの温もりをかんじるようになったのは。
たぶん子猫をもらってきて、わたしの部屋で寝るようになってからだ。
猫の名前はエウロパ。
中学時代の同級生、八坂マミにもらったメス猫だ。
このエウロパが鳴くと、きまって左腕にわたしとちがう人の温もりをかんじる。
それはたぶん男の人だろうとおもう。
男の人のおだやかなだが、包まれる温もりをかんじる。
そんなことは気味が悪いと、知らない人はおもうかもしれない。
でも、わたしにはこの温もりが妙に心地好い。
最初のコメントを投稿しよう!