第2話「恋しさは腕に残る」―1

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第2話「恋しさは腕に残る」―1

猫が鳴いた。 また今夜もアレがやってくる。 わたしは深呼吸をして、左腕に意識を集中した。 カチコチと鳴る時計の音だけが、部屋の呼吸音のようにわたしの耳に届く。 やがてソレはやってきた。 左腕の皮膚にかんじる、わたしとちがう温もりの感触。 それはいつからだろうか。 猫の鳴き声とともに、わたしの左腕に誰かの温もりをかんじるようになったのは。 たぶん子猫をもらってきて、わたしの部屋で寝るようになってからだ。 猫の名前はエウロパ。 中学時代の同級生、八坂マミにもらったメス猫だ。 このエウロパが鳴くと、きまって左腕にわたしとちがう人の温もりをかんじる。 それはたぶん男の人だろうとおもう。 男の人のおだやかなだが、包まれる温もりをかんじる。 そんなことは気味が悪いと、知らない人はおもうかもしれない。 でも、わたしにはこの温もりが妙に心地好い。
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