目線の先

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「ヤベッ、さっきの教室に教科書置いてきた…」 名前も知らない先輩を一目惚れしてから一週間が経った。 やはり、何百人といる生徒の中で何年生かも分からない先輩を捜すのはとても困難な事で、半分諦めていたりもした。 「今から戻ると次の授業間に合わねーぞ。どうせ使わないんだから後で取りに行けよ」 その日は殆どの授業が移動教室で、次の授業の教科書をロッカーまで取りに行き、指定された教室に行くだけで休み時間の半分は使ってしまう。 腕時計を見れば3分後には授業が始まる事を針が教えてくれている。 「次の授業って英語だろ?いいや、サボる。教科書取ってくるわ」 いつもなら友達の言葉通り、今日は使用しない教科書を放課後辺りに取りに行く。 けど、なんとなく忘れた教科書が気になりさっき授業を受けていた教室へと引き返した。 「この時間はこの教室使わないんだ…」 教室へ向かう途中に鐘が鳴り、学校内は静寂に包まれる。 目的の教室は使用して無く、廊下の外でも人気がないのが分かった。 ガラッと戸を開ければ、電気も点いていない静かな教室にその音が響く。 「俺の教科書見っけ」 一番後ろの窓側の席にポツンと置かれた教科書を持ち上げる。そのまま窓の外を見ればどっかのクラスが校庭でサッカーをしている光景が見えた。 「さて…何処でサボるかな」 この教室でサボる手もあるが、先生に見つかる可能性もある。 保健室にでも行って寝てるかな…。 そう言いながら教室を出ようとした時だった。 戸を開けようと手を掛けようとした瞬間、廊下側から誰かが勢いよく戸を開けた。
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