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「うわっ、ビビっ…た」
いきなり開かれた戸に驚きながら、その戸を開けた人物を見る。
目の前にいたのは、
俺が捜していた先輩…。
向こうも人がいた事に驚いたのか固まっており、見開かれた眼には何故か涙が溜まっていた。
「…あっ」
固まっていたのは数秒で、先輩は逃げようと廊下へと方向を瞬時に変える。
それを阻止するかのように、反射的に出た俺の手が先輩の腕を掴んでしまった。
「何?」
先輩が振り向き、嫌そうに掴まれた腕と俺を見る。
「す、すみません…」
と謝るが、腕は掴んだまま放さない。
ここで放してしまったら、もう会えない気がしたから。
「俺一年の野宮誠って言います。もし良かったら、泣いている理由教えてくれませんか…。きっと楽になりますし、赤の他人だから他の人には絶対言いませんし…。だから、あの…」
自分でも何を言えば、先輩を引き留められるか分からなかった。
とりあえず涙の理由が知りたくて、口から出てくる言葉任せに喋る。
先輩はと言うと、凄く不思議そうな目で俺を見ていた。
「やっぱ、初対面で失礼ですよね。すみませんでした」
何も言わない先輩に諦めを感じ、掴んでいた腕を放す。
「話…長くなるよ?」
「え?」
突然ポツリ言われた言葉にうまく反応出来ず、再度聞いてしまう。
「だから…時間がかかるけどいいの?って聞いてるんだけど…」
「全然いいです。俺何時間でも聞きますっ」
「時間掛かるって言っても何時間も掛からないって」
そう言ってクスリと先輩が笑った。
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