目線の先

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場所は移動せずそのまま教室に入り、静かに戸を閉めた。 お互いに何か言うわけでもなく黙ったまま隣同士で床に座り、壁により掛かる。 無言状態が続き、隣に座っている先輩は下を向いており、俺はそのまま前方にある黒板を眺めていた。 何か言った方がいいのだろうか。 自分から誘ったわけだし、何も言わない沈黙の空間に焦りを感じていると、先輩が顔を上げて天井を見ながら言った。 「さっきね、彼氏と別れ告げられちゃったんだー」 「え…あっ、ぇえ!?」 いきなり言われた衝撃的な事実に、驚きを隠せない俺。 先輩は『んー』と、気持ちよさそうに腕を上げて背伸びをしている。 そりゃ泣くよな…てか、こんな事俺が聞いて良かったのか? その前に彼氏いたんだ…こんな可愛い人ならいるのは当たり前、か。 そんな事をグルグル考えていると、また無言になってしまった事に気がつき、慌てて質問をした。 「やっぱ…ショックですよね」 「いや、もう平気」 「は?」 少し残念そうに言う俺と対照的にあっけらかんとした声で、しかも即答で返事が返ってきた。 「ほら、もう泣いてないでしょ?」 なんて言いながら顔をこっちに向け、笑顔を見せる。 確かに涙は無かったが、『こんなに早く立ち直れるものなのか』と考えてしまう。 俺ならフツーに無理なんですけど。 頭を抱えて悩んでいると、隣でクスクス笑う先輩の声がした。
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