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「今、立ち直りが早すぎって思ってたでしょ」
「あ、はい」
「これね、野宮君のお陰だったりするんだよねー」
「マジっすか!!」
「…ってのは冗談なんだけど」
「冗談かよ…」
先輩に聞こえないようにボソリと言う。
冗談じゃなかったらどんなに嬉しい事か。
まぁ、現時点で何もしてないのが事実だけどさ。
「なんか最近ね『潮時かな』っていう雰囲気っぽかったからちょっと前から心の準備は出来ていたんだよね。
さっき泣いてたのはちょっぴりだけどやっぱ悲しくてさ…。
今までどんな時でも傍にいた人が、急に離れていっちゃうのは寂しいじゃん。心にポッカリ穴が空いた感じで…さ」
そう言う先輩の顔からはさっきまでの笑顔が消え、膝を抱えて下を向いてしまった。
さっきまでの笑顔はやせ我慢、だよな。
やっぱり別れてすぐ立ち直れる人なんていないよ。大丈夫なフリして実は全然ダメで…とても弱い先輩。
「先ぱ…」
「あーもう、こんな辛気くさい話終わりっ!!場が白けちゃう。って私がいけないのか」
話掛けようとした瞬間、いきなり顔を上げさっきの笑顔で先輩が話し出した。
「いけない、大事な事忘れてた…私まだ自己紹介してない。そうだよね?」
「せ…」
「3年5組の黒川美菜って言うの。私一発で野宮君の名前覚えたんだから一回で覚えてよー。じゃないと…」
さっきの暗い感じが嘘のように明るく喋り続ける先輩を、俺はどうしても無理矢理元気を出してるとしか思えなかった。
「先輩!!」
ずっと喋り続けている先輩の言葉を遮る。
「違うでしょー。ちゃんと名前言ったんだから『○○先輩』って呼ばなきゃ…」
それでも笑顔で話し続ける先輩の方を向き、目を見て言った。
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