目線の先

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「どうしたの?」 キョトンとした顔で先輩が尋ねた。 本当はさっき後悔してたんだ。 「先輩…俺」 自分の事を"赤の他人"なんて言ってしまった事を。 「好きなんです…先輩の事が。先輩の隣にいる人は、俺じゃダメですか?」 本気で守ってあげたいと思ったんだ。 だから"赤の他人"で終わらせる事なんてできない。 「年下の俺じゃ頼りないかもしれないけど、先輩に悲しい思いは絶対させないから…」 雰囲気がどうこうの問題じゃなかった。 ここで言わないと次のチャンスなんて無いと感じたから。 「野宮君…あの」 「へ、返事はまだいいです!!」 いかにも困ってる先輩に対して、首を精一杯横に振る。 困らせてるのは俺のせいだけど。 まだ掴んでいた先輩の腕を放し、前方にある黒板へと歩み寄り白いチョークを持った。 そのまま黒板に自分の携帯番号とアドレスを書き上げる。 書き終わるとチョークを置き、その光景を見ていた先輩へと振り向いた。 「これ、俺の携帯番号とアドレスです。もし返事がOKなら連絡ください。ダメなら連絡はいいですから。」 そう言った時、授業を終わらせる鐘が鳴った。 鳴り終わったと同時に、俺は逃げるように先輩を1人残して教室から走って出た。 「誠、お前教科書は?てか何息切らしてんだよ」 息を切らして友達が待つ教室に着いた途端に言われた言葉。 「あー…忘れた」 結局また放課後に教科書を取りに行く事になった。 その時黒板を見たけど、俺が書いた携帯番号等は当たり前だけど綺麗に跡形もなく消されていて、何故か苦笑してしまった。 その日は先輩からの連絡は来なかった。
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