序章:天歌<ソラウタ>

10/11
前へ
/123ページ
次へ
「あれ? まだツキから説明されてないのか? 」 ソウマが眉を上げながら尋ねる。リョウが頷くと、ソラが呆れ顔でツキを見た。 「ツキ、ちゃんと説明してやりなさいよ。あんたの仕分け人でしょ」 「わかってるよ!これから説明するつもりだったんだもん!」 ツキはぎくっとしながら弁解したが、ソラは疑い深そうに目を細めている。 そんな2匹をよそに、ソウマが優しい口調で説明を始めた。 「仕分け人っていうのは、誰かを殺し、殺された人間がなるものなんだ。自殺も含めてな」 「じゃあ、オレも……?」 「多分な。リョウも、死の瞬間の記憶はあるだろ?何が見えた?」 「えーと……大きくて白い建物と、空から落ちてきた雪。……それぐらい、かな」 横で倒れていた男性の事は、あえて言わなかった。それは、自分で考えなければいけないような気がしたからだ。 「んー。そんだけだったら、イマイチわかんないな。ま、霊に関わっていくうちに見つかるよ。気楽にいこうぜ!」 記憶さえ見つかれば、天に還れる……死神はそう言っていた。ならば、生前の記憶、犯した罪とやらを探すしかない。 「さぁて。そんじゃ、俺らも仕事に戻ろうか!」 すでに中天に達している太陽を見て、ソウマが元気よく声をあげる。 その時、ツキが思いついたように目を輝かせた。 「ねぇ、ソウマ。ツキとリョウ、しばらくソウマにくっついてていい? 未練切りの仕事、ツキが口で教えるより、見た方が早く覚えられると思うんだ」 「おぅ、いいよ! なぁ、ソラ?」 ソウマが快く答えたが、ソラは訝しげにツキを見つめて呟く。 「ツキ、説明するの面倒臭くなったんでしょ?」 「だって、一から説明するの大変なんだよ! ソラはいいじゃん! ずっとソウマについてるんだもん」 ツキが反撃したが、ソラは聞く耳を持たず、つんっと横を向いてしまった。 「まぁまぁ、ケンカすんなって」 ソウマは2匹をなだめると、リョウに笑顔を向ける。 「リョウ。俺たち仕分け人の役目は 、この世に留まる霊の未練を断ち切ること。で、その手段は2つ。 "未練切り" と "未練斬り" だ 」
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加