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「ミレンギリ?」
「そう。まぁ、百聞は一見に如かず……見せてやるから、一緒に行こう。しばらく、よろしくな」
ソウマが愛想よく笑い、握手を求めて手を差し出した。リョウは、その手を慌てて握り返す。
「ありがと、ソウマ!ツキ、ソウマ大好きー!」
ツキが嬉しそうにソウマの頭に飛び乗った。それを見て、ソラが不機嫌そうに目を細める。
「ちょっと、ツキ! あんまりソウマにべたべたしないでよ。ソウマについているのは、私なんだからね!?」
「ソラのけち! ソラこそ、リョウに近づかないでよ!?」
ツキはぷうっと頬を膨らませてリョウの頭に飛び移り、ソラに向かって舌をだした。
互いにそっぽを向く2匹を見つめ、リョウがこっそりソウマに尋ねた。
「……ツキとソラって仲悪いんスか?」
不安げなリョウとは対照的に、ソウマはにこやかに微笑んでいた。2匹の喧嘩を面白がっているようにさえ見える。
「いや? 大の仲良しだよ。よく言うだろ? 喧嘩するほど仲がいいって」
「あぁ、なるほど」
リョウが納得したように頷いた時、突然ソラとツキの尻尾がある方向を指し出した。
「ソウマ、霊が近くにいるわ」
その報告にソウマが素早く反応し、辺りを見渡しながら問いかけた。
「了解。で、どの辺りだ?」
「あっち」
ソラがソウマの肩を離れ、川の上流側の道を指しながら進み始めた。
それを追うように足を踏み出したソウマが、ふと思い出したようにリョウの方を振り返る。
「ソラ達の尻尾には、それぞれ力があるんだ。霊を感知するもの、霊の情報を感知するもの、天への道を示すものの3つだよ」
「ツキ達、すごいでしょ!? ……まぁ、感知するには、結構近づかないとダメだけどねー」
ツキが、自分の尻尾を見つめながら誇らしげに羽根をパタパタさせた。
「へぇ。すげぇ」
感心するように、ツキの尻尾を見つめるリョウ。
3つに分かれているのには理由があったんだ……と、思わずツキの尻尾を掴んだ。
「痛い!リョウ、ひどいよ!」
「あ、悪い」
リョウが慌てて離すと、ツキは掴まれた尻尾を抱えて口を尖らせた。
「ツキはデリケートなの!イジワルしないで!」
そんなやりとりをしているリョウとツキに、ソウマが笑顔を向ける。そして、ソラの進んでいく方向を指差した。
「さ、行こうか。リョウ」
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