序章:天歌<ソラウタ>

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――なんだ……? 閉じている瞼の向こうが、やけに明るい。男性は、恐る恐る目を開ける。 直後、驚きのあまり硬直してしまった。目の前に広がる光景が、先程まで見ていたものとかけ離れていたからだ。 そこに、目の奥が痛くなるほどの純白の部屋。 どうやら、どこかの宮殿の一室のようだ。丸い円状の部屋は、一戸建ての家が1軒おさまりそうな程の広さがある。 扉も窓も見当たらなかった。あるのは、シミ一つない真っ白な壁と、部屋全体を支える中央の大きな柱だけ。 目を刺すような白さから逃れようと、男性は視線を上に向ける。 予想を裏切り、そこには天井など存在しなかった。吹き抜け状態で雲一つない蒼天が広がっている。 ――オレは、なんでこんなところにいるんだ? 疑問に思い、記憶の糸を手繰り寄せようと眉を潜めた。 ……が、何も思い出せない。完全に記憶がリセットされているようだ。 自分が誰なのか、どんな人生を歩んできたのか。楽しい思い出も、悲しい思い出も全く頭に浮かんでこなかった。 なんとか記憶を辿って思い出せたのは、死の瞬間に見た光景だけ。 白い大きな建物、右脇で息絶えていた年輩の男、そして……最期に見た初雪。 そこまで思い返した時、どこからか低い声が聞こえてきた。 『ここは天界の宮。そして、懺悔(ざんげ)の間だ』 突然聞こえた声に飛び上がり、その低い声の主を探す。 しかし、その部屋には誰も見当たらない。ただ、声だけが不気味に響く。 ――天界?……って、天国?まさか……オレ、死んでるってこと? 男性の心の中で生まれた疑問を感じ取ったかのように、低い声が話を続けた。 『左様。だが、お前が生まれ変わる事は叶わぬ。転生できる者が向かうは、輪廻(りんね)の間。ここは、魂の仕分け人になるべき魂が訪れる部屋』 ゆったりとした声の後、 「死神様ー!」 突然頭上から聞こえた甲高い声。
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