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上を見上げると、吹き抜けの空から小さな黒猫が舞い降りてくるのが見えた。
「ツキ、参上! 」
自らをツキと呼ぶその黒猫は、嬉々とした様子で白い床に着地する。
男性は、目の前に現れたその奇妙な生物を見てア然とした。
一見はただの黒猫なのに、背中には小さな黒い羽根。それに、尻尾が3つに分かれている。
この黒猫の話からすれば、どうやらこの声の主は死神らしい。
なんとも信じがたいことではあるが……それ以上に信じがたい異様な生物を目の当たりにした今、それを疑う理由はないだろう。
ツキに釘付けになっている男性をよそに、死神は相変わらず重みのある声で話し始めた。
『ツキ……この者は、お前が新たにつくべき仕分け人だ』
死神のその言葉を聞いたツキが、ショックを受けたような顔で硬直した。
「えっ!? ツキの休暇、もう終わり!? ツキ、まだ10日ぐらいしかゆっくりしてないよ!?」
『天界と下界では時間の流れが違う。下界では既に40年の時が流れた。これ以上休暇はやれない』
「むー……。わかったよ」
ツキはしかめ面でしぶしぶ納得すると、男性の方に向き直り、首を傾げながら尋ねた。
「ねぇ、お名前は?」
――名前?オレの名前は……
「リョウ」
一番に浮かんだのは、その単語だった。その答えにツキが元気よく頷く。
「リョウね、わかった!ツキは魂の仕分け人のパートナー。これからリョウにつくから!よろしくね!」
「魂の仕分け人?」
リョウは目を丸くして問いかけた。ツキは相も変わらずハイテンションのまま、3つの尻尾を振って答える。
「うん!リョウは魂の仕分け人になったんだよ!じゃあ、まずは仕分け人について説明するね!」
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