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「下界にはね、未練の鎖に縛られて天に還れない魂がいっぱいいるの。仕分け人の役目は、そんな霊を天に導いてあげることなんだよ」
ツキが元気よく説明する傍ら、リョウは面倒臭そうに顔をしかめた。
「なんで、オレがそんなこと……。オレは死んだんだろ?死んだら、天国か地獄に行く。そうじゃないのか?」
リョウの問いかけに、再び死神が口を開いた。
『大半はそうだ。しかし、お前は違う。お前は罪を犯した。それを償わずに天に向かうことは許されない』
「……罪?オレが一体何したっていうんだよ?」
リョウが、姿の見えない死神に向かって尋ねた。が、死神は調子を変えることなく話し続ける。
『それは、自分で探すことだ。転生したければ、全てを思い出すがいい』
死神の言葉の後を次いで、ツキが説明を再開した。
「リョウはツキと一緒に下界に降りるんだよ!心配しないで。ツキがしっかりサポートしてあげる!」
ツキは誇らしげに胸を張り、リョウの肩に飛び乗った。
同時に、リョウの目の前に突然大鎌が現れた。背丈以上もある大きな鎌を見つめるリョウに、死神が静かに話しかける。
『これがお前の鎌だ。使い方はツキに聞きなさい。さぁ、扉を抜け、下界へ向かいなさい。永久の旅へ……』
死神の言葉の直後、突如大きな扉が姿を現した。鉄製のその扉は、純白の部屋の中で一際浮き上がって見える。
「リョウ、行こ!」
ツキは、いつの間にかリョウの肩を離れ、扉の前でパタパタ飛んでいる。
その言葉に従い、リョウは静かに扉に近づいていく。そして、そっと押し開けて下界への道を進んでいった。
終わりの見えない、償いの旅へ。
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