序章:天歌<ソラウタ>

8/11

44人が本棚に入れています
本棚に追加
/123ページ
「うん! リョウだよ! 今、天界から降りてきたとこなの」 ツキが陽気に言う。しかし、ソウマの後ろに立つマキを見つけた瞬間、ツキの顔が引きつった。 「あーっ!マキ!」 急いでリョウの後ろに隠れるツキ。ぼーっとしていたマキは、その叫びにようやく我に返り、ツキを見つめた。 「あら……たしか、前にキズナについてた……。名前何だったかしら……?」 「ツキだよ!」 ツキはリョウの肩から少しだけ顔覗かせ、不機嫌そうに答えた。 「そんなに警戒しなくてもいいじゃない……。もう前みたいにアメと間違えたりしないわよ……?」 「ツキが怒ってるのはそんなことじゃないよ! ずぅっと前、マキはツキにひどいこと言ったんだから!」 ツキの異常な怒り様に首をひねり、ソウマが問いかけた。 「マキ、今度は一体何を言ったんだ?」 「さぁ……全く覚えてないわ。何か言ったかしら……?」 マキは、しばらく何かを考え込むように眉を潜めていた。しかし、一向に答えに辿り着かない。 痺れを切らしたのか、ツキがソウマに向かって悲しげに訴えた。 「聞いて!マキはツキのこと、たるんだ顔って言ったんだよ!」 ツキがそういった直後、ソウマとソラが吹き出した。 「その通りじゃない」 ソラが、ソウマの肩の上で身をよじらせて大笑いした。 「ひどい!ツキの顔はたるんでないもん!」 「そうだよな。ツキはかわいいよ」 ソウマがフォローをいれたが、その顔は笑いを抑えるのに必死な様子。あまり説得力のない言葉だった。 その時、 「……やっと見つけた」 3人の仕分け人の頭上から威厳(いげん)のある声が聞こえてきて、全員が一斉に空を見上げた。 そこには、ツキとソラと同様に黒い羽根が生え、3つの尻尾を持つ黒猫の姿。 「マキ、勝手にふらふら歩くな! 使いは死神を感知できないと何度も教えただろう」 その黒猫はブツブツ文句を言いながら、マキの肩に静かに着地した。 「あ……アメ」 マキが安堵の表情を浮かべながら、肩に乗るアメの頭をなでる。 「アメ、久しぶり!」 ソウマが笑顔でアメの顔を覗き込み、嬉しそうに挨拶した。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加