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全てを思い出し、最愛の人を想いながら消え去ったリョウ。それは、ある意味では幸せなことなのかもしれない。
「リョウ、笑ってた……。あんな風に笑いながら消えられるなんて……リョウは幸せ者だよ。終わらせてくれたソウくんに感謝してると思う……」
マキの言葉を受け、ソウマは心を蝕んでいた罪悪感が薄れていくのを感じた。
未練斬りも、あるいは救いになりうるのだろうか?もし、リョウの苦悩を断ち切ることが出来たなら……それほど嬉しいことはない。
「ありがと、マキ」
ソウマはマキに笑いかけ、その頭をクシャッと撫でた。
マキがソウマに微笑み返したとき、突然ソウマが顔を引きつらせた。その視線の先は、自動ドアに映る自分の姿。
「……あれ!? 俺の髪がない!」
ほんの少し前まであった長い後ろ髪がなくなり、現代の男性のように短くなっていたのだ。
「さっき、リョウに斬られたんだよ……?気付かなかった?」
「うわー、ショック!」
寂しくなった首元を撫でながら、ソウマが肩を落とした。
「どうでもいいじゃん……ソウくんの髪なんて誰も興味ないよ……」
「ばか!髪は武士の誇りなんだぞ!」
「……古臭いなぁ。イマドキ武士なんて流行んないもん……」
マキがため息まじりに言った直後、その腕の中で丸まっていたツキが決心したように顔を上げた。
「ツキ、天に帰らなきゃ」
「天に帰る?」
「うん。また新しい仕分け人につくの。それが、ツキの役目だもん」
ツキの声はひどく沈んでいるが、その目は使命感に溢れていた。
落ち込んでなどいられない、仕分け人はまだまだ絶えないのだから……ツキは自身を奮い立たせ、マキの腕から飛び立つ。
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