2人が本棚に入れています
本棚に追加
「あららー、ニア行っちゃったねー。」
「追いかけなくていいのか?ロイ。」
サトリがロイにそう尋ねると、ロイは少し座る体制を変えてからそれに答えた。
「おいかけたいところだけど…今はさすがに疲れて走れないもん。それに、ニアなら一人でもきっと大丈夫。ちゃんと渡せるよ。」
「そっか…なるほどな。ところで、ロイは誰にチョコを渡すんだ?」
サトリがそう聞くと、ロイは顔を真っ赤にして自分の顔の前で両手をぱたぱたと動かしながら答えた。
「べ、べつに本命とかいないから!みんなに渡すだけだから!あんまり気にしないで!ね?」
ロイのその態度は、あきらかにさっきとは違っており、赤くなっている顔を隠してはいるが、ごまかしきれていない。
「ぼ、僕もなんか不安になってきたなー!お部屋もうもどろーっと!うんそうしよう!じゃあねー!」
そしてロイは、ずれたメガネを直した後、ニアと同じく、立ち上がって自室に走って戻っていった。
ロイが走って行った後、一人取り残されたサトリは、軽くため息をつきながら、独り言をこぼした。
「はぁ…なにが本命がいないだよ…俺はお前の本命くらい誰なのか知ってるっての…。わかりやすいし。俺も…素直にならないとな…。」
そしてついに、ホワイトデーの日はやってきた。
最初のコメントを投稿しよう!