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「ただいま。」 慣れ親しんだ祖父宅に上がり、 いつも通りに家の中に入ると、 まだ、自分の中で納得が行かないから、 キッチンを見つめてため息を一つ。 いい加減引退します。って、 シズさんが、妹さんの住んでいる隣県の都市に引っ越しをすると宣言した。 寂しいが、 お身内の近くで暮らしたいと言ったシズさんに、 じーちゃんもお袋も何も言えなくなり納得した。 最後まで我が儘を言っていたのは、木崎のじーちゃん。 「やだやだやだ。」って駄々っ子みたいに我儘言ったけど、 「私だって、姪や甥の子どもたちに囲まれて… 少しは普通のおばあちゃんになりたいんですよ。」って言われたら 木崎のじーちゃんは絶句していた。 「一花や孝祐じゃダメ?」って、 最後の一押しみたいに言い放ったが 「いっちゃんや孝ちゃんにはちゃんとおばあちゃんがいますから…」 ふんわりした笑顔でそう返事したシズさんに 「俺や心美は?」って言ったらシズさんは涙を浮かべて絶句した。
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