第16話 泉希沙良編①

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「ラッキーチャンスは、何らかの代償と引き換えに欲しいものを与えてくれるわけだよね。だったら、何の脈絡もなく、知らない人間のラッキーチャンスを教えたりなんかするだろうか」  確かに。  今、ウチらが知っているラッキーチャンスは、悠理のおばあちゃんと親友君が答えたもの。それに、ハルクの好きなバンドのボーカル、コウジさんが答えたものだ。  ただし、すべての選択肢や効果を知っているわけではない。  断片的に聞いているだけだ。  だけど、その断片的なものだけでも、どれも回答者が「欲しい」または「そうなってほしい」と望む選択肢ばかりだった。  たとえば、悠理のおばあちゃんが若返った件。  女性ならば、誰しもいつまでも若くきれいでいたいと思うものだ。  年を重ねれば、外見についてはどこかで諦めるとき(受け入れるときとも言う)が訪れる。それは、若くありたいという気持ちを消すのではなく、心の奥底で眠らせるだけなのかもしれない。  ラッキーチャンスは、眠らせている欲望にも反応するということか。
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