すれ違いの僕と君

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 桜があっという間に散って、新緑が眩しい中――容赦なく照りつける日差しを肌に感じて、結構暑いなぁと思いながら行きつけの床屋に向かうべく通い慣れた道を歩いた。 「やぁノリちゃん、久しぶりだね。いつもの感じでいいのかい?」  床屋の扉を開けると目が合った途端に、おじさんが満面の笑みで訊ねた。営業スマイルにつられ笑いしながら、こんにちはと挨拶して言葉を繋げる。 「今回はバッサリ切ってください。これから暑くなるし、勉強の邪魔になるから」  毎回『いつもの』とお願いしている僕が、珍しく髪型について注文したので、おじさんは目を丸くした。 「ああ、そうか。ノリちゃん今年は、受験生だもんな。じゃあ思いきって、短くカットしちゃうよ」 「はい、お願いします!」  空いている席に腰かけると、首にふっくらしたタオルを巻きつけてから、躰を覆う大きなクロスをつけて、髪を洗ってくれた。  その後、おじさんは笑顔を絶やさずに話かけつつ、伸びきった髪にそっとハサミを入れていく。  いつもより短くなる髪の様子を、目の前にある鏡でしっかりと確認した。  ――これは僕の誓いの儀式。  ずっと君と一緒にいられますように。僕の願いがどうか届きますように。
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