ホワイトデー行進曲

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再び固いものを食わされたことだし 再び固いもの返してやる。 白い特設コーナーは素通り。 珍味にも用はない。 花束も必要ない。 「おい」 呼び掛けて にへらと笑って振り向くあいつに 小さな箱を差し出した。 にへら から 真顔になって への字口になっていく顔が たまらなく愛しい。 会社の女性陣にもらったどんなチョコも お前が作る謎の食べ物も お前の百面相には敵わない。 大した稼ぎはないから 小粒で控えめだけど 本物の硬い石が埋め込まれたリングを 細い指にはめた。 「結婚してもらえますか?」 「はい」 ……ありがとう、と抱きついてきたあいつから、 喜びが全身に伝わって 俺もありがとう、と自然に返していた。 来年も再来年も 死が二人を別つまで この百面相は俺のもの。 End
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