「迅雷」

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午前10時20分 島建設ガレージ 「…ここは奇跡的に無事だった」 ガレージには1台の車と、メンテナンス用の工具や資材が置かれていた。   「…この車は動かせないんですか?」 秀悟が尋ねる。 「動かなくはないが…その、奴等が現れた時にどさくさに何処かへなくしてしまってな」 アハハと笑いながら智也が呟く。 「どこに落としたかは覚えてない?」 春菜が尋ねる。 「んー、仕事柄いつでも飛び出せるように、いつ鍵はズボンポケットに入れててな、確か親父を荻原さんの葬儀に連れていって、そこからパニックが起きて…親父を石段付近まで運んで…けど、その時親父は俺を守るために犠牲に囮に」 どこか暗そうな表情をする智也。 「…それはお気の毒でしたね」 黎子が呟く。 「俺がもっとしっかりしてれば…親父は…」 「社長!しっかりしてくれよ!!」 弥彦が叱咤くする。 「弥彦!あんた!」 春菜が止めようとするが、それを秀悟が止める。 「…」 首を振る秀悟。 「親父さんは社長を生かそうとしたんじゃないのか!?なのに、その覚悟を無駄にするのか!?俺らだって親友が殺されたりしてる…好きで奴等を殺してるわけじゃない…ただ、今は生き残らなきゃなんねぇんだ!死んでいった者たちのために…なのに、死んだ人間のことを悔いてもなにも始まらないんだよ!!」 「…弥彦、あんた」 黎子が呟く。 「…弥彦君の言うとおりだ…もう悔いても親父は戻ってこない。そうだよな、何を嘆いてるのやら俺は!ちゃんと生きるぜ親父!」 顔を上げた智也は決意に溢れていた。  
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