107人が本棚に入れています
本棚に追加
午前10時20分 島建設ガレージ
「…ここは奇跡的に無事だった」
ガレージには1台の車と、メンテナンス用の工具や資材が置かれていた。
「…この車は動かせないんですか?」
秀悟が尋ねる。
「動かなくはないが…その、奴等が現れた時にどさくさに何処かへなくしてしまってな」
アハハと笑いながら智也が呟く。
「どこに落としたかは覚えてない?」
春菜が尋ねる。
「んー、仕事柄いつでも飛び出せるように、いつ鍵はズボンポケットに入れててな、確か親父を荻原さんの葬儀に連れていって、そこからパニックが起きて…親父を石段付近まで運んで…けど、その時親父は俺を守るために犠牲に囮に」
どこか暗そうな表情をする智也。
「…それはお気の毒でしたね」
黎子が呟く。
「俺がもっとしっかりしてれば…親父は…」
「社長!しっかりしてくれよ!!」
弥彦が叱咤くする。
「弥彦!あんた!」
春菜が止めようとするが、それを秀悟が止める。
「…」
首を振る秀悟。
「親父さんは社長を生かそうとしたんじゃないのか!?なのに、その覚悟を無駄にするのか!?俺らだって親友が殺されたりしてる…好きで奴等を殺してるわけじゃない…ただ、今は生き残らなきゃなんねぇんだ!死んでいった者たちのために…なのに、死んだ人間のことを悔いてもなにも始まらないんだよ!!」
「…弥彦、あんた」
黎子が呟く。
「…弥彦君の言うとおりだ…もう悔いても親父は戻ってこない。そうだよな、何を嘆いてるのやら俺は!ちゃんと生きるぜ親父!」
顔を上げた智也は決意に溢れていた。
最初のコメントを投稿しよう!