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午前11時59分 石段付近
「秀悟達大丈夫かな」
石段に座り、弥彦が呟く。
「大丈夫だろ。父さんもいるし。あ、これ二人に」
黎子はどこから持ってきたか、缶ジュースを手渡した。
「あ、ありがとう…」
受けとる華江。
「お!サンキュー!けど、どこから?」
缶ジュースを開けながら弥彦が尋ねる。
「これか?ほら、あそこにある個人商店から持ってきた」
下にはひっそりとした個人商店があった。
「店の人はいなかった…けど、店の外に血が続いてたから恐らく…」
「そうか…無理もないわな」
缶ジュースを飲む弥彦。
「あの、黎子…さん」
華江が呟く。
「どうした?」
尋ね返す黎子。
「私…オレンジジュース苦手なんです…」
「あ…すまない。私の紅茶と交換するか?」
黎子が缶の紅茶を手渡す。
「い、いや、それは黎子さんのだし」
「遠慮するな。水分を取っとかないと後からもたないぞ」
「…ありがとう」
そう言うと黎子の紅茶とオレンジジュースを取り替えた。すると、その時。
「ウゥーーーーン!!」
突如、周りにサイレンが響く。
石段の横には町内に響くスピーカーがあり、それがお昼を知らせていたのだ。
「お昼か…そういやお腹も空いたな」
弥彦が呑気に呟く。
「…弥彦、華江、戦闘の支度だ」
黎子が立ち上がる。
「…そういうことですね。分かりました」
華江も立ち上がる。
「お、おいどうしたんだよ?突然…」
弥彦は黎子に尋ねる。
「こんだけ響くサイレンだ。音につられてここら辺に奴等が集まってくるかもしれない」
と、言うと下段付近の住宅の間からゾンビがゾロゾロと現れてきた。
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