「脅威」

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「父さん!!」 黎子が止めようとするも。 「俺には何も後悔することはない。このまま死ぬなら、戦いの中で死ぬのみ!」 右手には鎌だけになった鎖鎌を握りしめている。 「少しでも奴らを楽にしてから死んでやる。それと黎子、これを…」 身につけていた刀を一本差し出す。 「これは大切な刀…いいんですか?」 「死に行く者には不要。これで十分…」 鎌を見せる。 「分かった…絶対、生き残るから!」 そう言うと秀悟達の元へ駆け出す。 「…いいのか黎子」 弥彦が尋ねる。 「あれが、私の父さんの生き方なの。だから、最後まで貫きとおさせてあげたい…」 黎子の表情はいつもの凛とした表情に戻っていた。 「いつもの黎子に戻ったな」 弥彦も安心した顔を見せた。 「みな!急ごう。車の運転は任せろ」 智也が秀悟達をガレージへ誘導する。 一方、黎子の父はゾンビの大群に単身突撃をしていた。 「うおおおおお!まだ燃え尽きはせぬ!」 鎌で確実にゾンビの首を切り裂いていく。 しかし、限界がきたか、途中でひざまづく。 「くっ…まだ…まだ力尽きるわけには!」 自分に一喝いれると目の前のゾンビの首を切り裂く。 それでも左腕からの出血は止まらず、ついに倒れる。 「は…はぁ…こんな力ばかりの俺も最後は人のためになれたか…」 鎌を首に当てて、自害しようとすると、目の前に自衛隊員のゾンビが口を開けている。 その胸には手榴弾がぶらさがっていた。 「最後の…悪あがきといくか…」 震える手を手榴弾にかける。だが、同時に首、足、腹、体のあちこちををゾンビに噛まれる。体中に走る激痛。 それでも手榴弾のピンに指をかけ引っ張る。 「赤城…黎子…生きろ…」 そして、黎子の父が力尽きると同時に手榴弾が爆発を起こし、周囲のゾンビが肉片へと帰した。
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